秋になるとよく紅葉を見ながら温泉に連れて行った老母が、ここ数年は「行こうか」といっても「行かん」と乗ってこなかった。歳をとってめっきり足が弱ったためか、迷惑をかけたくないという気持ちがあったのだろう。それが最近になり突然「行く」と言ったのだ。今を外したらもう行けなくなるとでも思ったのだろうか。気の変わらない内にと早速福島の実家に行き母を連れて帰って来た。
そして今日、母と塩原温泉に来たのだ。老母のために近いところ、そして11月中旬も過ぎた今、まだ紅葉の見れるところとして選んだのである。実は16日に塩原渓谷ハイキングに来ており、紅葉の見所は掴んでいたので、迷うことなく車で見て回る。母は窓の外を眺めながら時折「きれいだ」と声を出していた。声が出ないと「どうきれい？」と催促すると「おーきれい、きれい」と半ばおどけて応じてくれた。
一通り見回った後は宿へ直行。宿は「絶景露天風呂の宿 ホテル塩原ガーデン」。今回の宿選定の条件は、母のために部屋からの眺めのいいところ、あわよくば紅葉が見れればとの思いと温泉のいいところで探したのだ。宿泊プランは、室数限定、紅葉と温泉満喫の激安プランの渓谷側和室だ。部屋に入ると眺めは抜群、川と山と岩肌の絶壁、さすがに紅葉は終わっていたが、盛期なら素晴らしい眺めだったろうと思われた。
ホテル塩原ガーデン 窓からの眺め、紅葉の盛期は素晴らしかったろう
早速一風呂浴びへ。母は妻と東京から来た姉の二人がかりで連れて行かれた。実は妻が一人では不安だというので姉にも来てもらったのだ。風呂へ行くと露天風呂は2つあり（かじかの湯）、部屋からの眺めとほぼ同じでまさに絶景であった。ところが翌朝は男女入れ替えとなっていて、こちらの湯（もみじの湯）はちょっと眺望に欠けたなー。でも比較の問題で、悪いわけではない。お湯は全てかけ流しで、露天は源泉のみである。
もみじの湯の内湯と露天風呂
夕食はあまり期待していなかった。何しろ激安プランで一人7,980円なのだから。母をもてなすにはちょっと安かったが、眺望と温泉優先で選んだ結果だし、食は別途考えればいいと割り切ったのだ。ただ、味はどうかなーと気になっていた。しかし豪華ではないが全て平らげてしまったのだからまずまずだろう。このホテルは眺望、風呂、料金と満足の宿、特に新緑や紅葉時期はおすすめですなー。
翌日はもみじラインの入り口まで行き、名残の紅葉を見て帰路に着いた。母も97歳、今回はよく決意して来てくれたものだ。来てよかったと言っていたが孝行を出来たことに感謝だ。一方、次はもう無理かなと思うと何か複雑な気持ちでもあった。
